コンピュータホログラフィ

従来の古典的なホログラフィは,感光フィルムを用いたアナログ写真技術です.コンピュータホログラフィはそれを現代のコンピュータ技術・デジタル技術で再現したものです.

下図は,古典的なホログラム(以下,光学ホログラムと呼びます)の撮影方法を表す図です.光学ホログラムの撮影にはレーザー光源を用い,そのビームを分岐します.一方のビームをレンズで広げて被写体を照明します.もう一方のビームは参照光と呼ばれ,記録材料である感光性フィルムを直接照射します.

ColorShionII.gif

レーザー光で照明された被写体の光が感光性フィルムに到達すると,参照光と干渉します.その結果,干渉縞と呼ばれる一見ランダムなパターンが感光性フィルムに記録されます(ただし,実際の干渉縞パターンは1マイクロメートル以下の細かさのため肉眼ではほとんど見えません).この記録された干渉縞がホログラムの実体です.

干渉縞に参照光とほぼ同じ光を照射すると,干渉縞パターンで光が回折され,記録された被写体の光と同じ光が発生します(この理由を数式無しで説明するのは難しいです).この光をのぞき込むと,被写体があたかもまだそこにあるかのような立体映像を見ることができます.

このようにしてホログラム立体映像を制作することができます.しかし,この古典的な方法で立体映像を作成しようとすると,実物の被写体が必要になります.何か作成したい立体像のイメージがあったとしても,まずそのイメージの実物(模型)を製作する必要があります.また,干渉縞はマイクロメートル以下の細かさのため,ほんのわずかの振動でもカメラ撮影のいわゆる手ぶれや被写体ぶれと同じことが生じ,鮮明な再生像を得ることができません.撮影自体もレーザー光以外の光が入らない暗室で行う必要があります.そのため光学ホログラムの撮影には,高度のレーザー設備・除震設備,さらには職人芸に近い撮影技術が必要です.

下図に示すように,コンピュータホログラフィは,古典的な光学ホログラフィの撮影過程をコンピュータによりシミュレートし,デジタル画像として干渉縞パターンを計算する技術です.計算された干渉縞パターンは,高解像度の描画装置を用いて描画されます.これにより,光学ホログラフィと同じ立体映像を作り出すことができます.

ColorShionII.gif

コンピュータホログラフィでは,光学ホログラフィと異なり,3D映像を作るために実物体を必要としません.コンピュータグラフィックスのモデルデータさえあれば,自在にその映像をホログラムとして作り出すことができます.

特に,全方向視差高解像度CGHでは,ホログラフィ本来の「正にそこにあるかのように見える」立体映像を再生することができます.

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