全方向視差ホログラム

ホログラムは物体の光を再生します.物体が点(CGHの場合はモデルが点)である時,点から出た光がホログラムで再生されると,下図のように,水平方向にも垂直方向にも広がっていく光として再生されます.

FP-CGH.png

物体(モデル)の全ての点がこのように再生されるとき,これがもっとも自然な再生像です.このように像を再生するホログラムを全方向視差のホログラム(全方向視差CGH)と呼びます.全方向視差ホログラムでは,眼の位置を左右に振っても上下に振っても,自然に像が変化します.またそれだけでなく,水平方向にも垂直方向にも眼のピントが物点の位置に自然に合います.

しかし,ある程度のサイズと視域があるCGHでは,数100億画素~数1000億画素もの大変高い解像度が必要です(→高解像度の理由).このような超高解像度のCGHで全方向視差の光をコンピュータで計算することは大変な作業となり,計算に長時間を要する場合があります.計算時間を大きく短縮する方法の一つは,水平方向の視差のみを残して垂直方向の視差を放棄することです.これによって計算量は,概ね全方向視差の場合の平方根に短縮できます(例えば全方向視差の計算量が10,000の時,水平方向視差の計算量は約100になります).このようなCGHを水平方向視差のみのCGH(Horizontal Parallax Only CGH: HPO-CGH)と呼びます.

ただし,水平方向視差のみのCGHであっても垂直方向に光を広げる必要があります(そうしないと眼の位置を上下に動かしたとき像が見えなくなります).そこで良く用いられる手段が,下図のように,ホログラム面で光を垂直方向に拡散させることです.

FP-CGH.png

このようにすることで,視点を上下に振っても像が見えなくなることは防げます.しかし,図からもわかるとおり,視点を上下に動かしたときの像の変化が不自然になります.また,眼のピント調節も,水平方向では正しく物点の位置に合うのに,垂直方向ではホログラム面に合うことになり,違和感が生じます.この違和感は再生する像の奥行きが深くなればなるほど大きくなります.そのため,このようなCGHでは「正にそこに物体があるかのように見える」というホログラム映像の良さを失うことになります.

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