全くの偶然であるが,当研究室の二つの論文がほぼ同時にオンライン版として上梓された.
- K. Matsushima, et al.: Simple wave-field rendering for photorealistic reconstruction in polygon-based high-definition computer holography, J. Electron. Imaging
- 中村将樹他: 超高解像度CGHにおけるBabinetの原理と部分光波伝搬を用いた隠面消去法, 映像情報メディア学会誌
これも偶然であるが,上記の論文は二つともかなりの難産であった. 論文中に記載されている日付を見て頂ければわかるが,私の英文論文の受付日は9月30日なので,オンライン版出版まで約7か月である.オンライン版としてはかなり異例の長さではないかと思う.これには事情があり,投稿後,ほぼ3か月間Topcial Editorに捨ておかれたのである.通常の手順のPeer Review(査読)に回されることもなく,「ただ今考え中」としてEditorの手元に据え置かれたのである.推測だが,Journal of Electronic Imaging誌は,通常はCGHによる3D画像技術を扱うような雑誌ではないので(CGHの論文が掲載された例がないわけではない),そもそも査読するべきかどうか判断がつかず取扱いが後回しになったのではないかと思う.投稿論文のオンライン追跡システムのステータスが"Under Consideration"からいっこうに変化しないのに我慢しきれず,私が抗議のメールを送ってやっと査読に動き出したようである.結果,Reviewer(査読者)がなんと5人もついたが,全員非常に好意的な反応を示し,あっさり掲載の運びとなった.査読者のコメントを読むと,どうも,論文に付けた再生像ビデオのインパクトが決定的だったようである.
→論文に掲載されているビデオの一つへのリンク
コンピュータホログラフィ(CGH)の論文投稿は大変であると思う.なにしろ,査読者が私が参加するような学会や国際会議に来ている人とは限らないので,実物を見ずに判定することになる.写真をみただけでは,単なる画像なので,おそらく価値や意味が分からない.その意味で再生像ビデオは強力な武器である.上手に撮れば,おっと思ってもらえるようである.
もう一つの中村君の和文論文にいたっては,受付日は2011年2月7日なので,出版までなんと1年と2か月以上を要している.こちらは,やはり査読者の不足が大きいであろう.この学会誌にはホログラム系がわかる査読者はほとんどいないようである.私も経験があるが,自分の専門とずれた分野の査読は非常につらいものである.そのためであろうが,査読の返事が規定の期限を超えても戻って来ず,またコメントから見てあきらかにCGHの分野の方ではなかった.さらに修正した原稿に対する判定が異常に遅いということが積み重なった.もちろん,こちらも差し戻し原稿に対する修正が期限ぎりぎりになったという事情もある.
いずれにせよ,CGHの論文投稿において,提案手法の効果の証明が難しいことと査読者の不足の2点は,頭の痛いところである.
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